Nimonoism

カフェでパソコンいじりながら揺れてるおっさんが気になって仕方ない

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僕は今、一人でコメダ珈琲に来ている

コメダ珈琲にて

片方が壁に面している二人席の壁側の席に座り、こんなくだらない文章を書いていることを悟られないように冷たい目でディスプレイを見つめキーボードをッターンしている

 

もうかれこれ2時間ぐらいここにいる

 

が、この2時間で僕がやったことと言えば、はてなの人気エントリーを読み漁ったこととポケモンGOのインストールをしたぐらいだ

 

この店内にいる誰よりも時間を無駄遣いしているということだけは絶対的な自信を持って言える

 

途中で何回かブログを書こうと思ったのは思ったが、接客がすごい良い僕の推しメンの店員さんが今日は珍しくマスクをつけている理由が気になって、それどころじゃなかった(それどころ)

 

冷房つけっぱなしで寝たのかな・・・?

しかし、僕が気になっていることはもうひとつあった

 

  

さっきから僕の席から通路を挟んだ右側のテーブルで、僕と同じように一人でパソコンをいじっている中年男性が"揺れている"のだ

 

時に優しく、時に激しく"揺れて"いるのだ

揺れているおっさん

耳にイヤホンをしているのでおそらくゴリゴリのHIPHOPかEDMを聴いてるに違いない

 

スーツ姿で体を上下に揺らすその中年男性(以後おっさん)は、朝の電車で揺られるこの世の終わりのような顔をしたサラリーマン達とはあきらかに違う"揺れ"をしていた

 

 

 

そう、このおっさんは揺られているんじゃない

 

  

 

"自ら揺れている"のだ

 

 

 

自ら揺れることを覚えたおっさんは、飛べることを初めて知った鳥のように希望に満ち溢れた表情を浮かべ、必要以上にッターンしているようにも見て取れる

 

 

 

とはいうものの、このおっさんも初めから揺れていたわけではない。1時間前ぐらいに席についたおっさんは30分程じっとしていた

 

席についてからすぐにイヤホンを装着したものの、すぐには揺れなかったのだ

 

 

 

おそらく揺れることでちょっと変な人に見られる危険性を考え、自分で抑制していたのだろう

 

しかし、それでも体を揺らさざるをえない程イケイケな曲がかかった為に、そのリミッターを無意識で外してしまったおっさんは狂ったように"揺れた"のだ

 

 

 

ただただ"揺れた"のだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おっさんが揺れはじめてから30分ほど経っただろうか・・・

 

 

 

おっさんは依然として揺れることをやめない

 

いや、それどころか更に勢いを増して揺れているようにも見える

 

普段はあまり心配事をしない僕だが、こればかりはおっさんの座っている"イス"の心配をせざるをえなかった。それほどの事態だ

 

もってくれ・・・・・イス・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、そのとき予想外の事件が発生する

 

 

 

 

 

僕はその光景に思わず目を疑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんと

 

 

 

 

 

おっさんが"体を揺らしたまま"コーヒーを飲んだのだ

 

 

 

一切の体の動きを止めずに"揺れながら"飲んだのだ

 

 

 

 

 

その瞬間、コーヒーを飲むときは体の揺れを止めるという僕の幼い頃から塗り固められてきた固定概念が崩れ落ちる

 

 

 

おっさんは僕が二十数年間積み上げてきた常識というモノサシを一瞬にして破壊し、非常識という言葉をねじ曲げて造った常識を僕に突き付けた

 

 

 

新しい世界への扉の奥から僕を見つめるおっさん

 

 

 

「できるかできないかじゃない、揺れるか揺れないかだ」

 

 

 

無言のおっさんはどこかそう言ってるような気がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年一番の衝撃を受けた僕はいてもたってもいられなくなり、とっさに店を飛び出した

 

クーラーで冷えた体に夏の生ぬるい風が当たり、とても心地良い

 

 

 

そして、愛車の運転席に座ると僕は心の中でこう呟いた

 

 

 

 

 

「俺なら世界ごと揺らしてやるよ」

 

 

 

 

 

そう言ってアクセルを踏むその足はどこか頼りなくも

 

この先何かを大きく変えてしまう

 

そんな気配すら感じられた・・・

おわりに

実話です。  

 

ばーい!